感情を味わう
私たちは子ども時代、うれしくてもつらくても、感情を隠し、抑え込むことを
学びます。
まわりの大人から、次のようなことを言われた記憶はないでしょうか?
「男の子なら泣いてはいけない」
「ちょっとうまくいったからといって有頂天になってはいけない」
「他の人がもっているものをほしがってはいけない」
「誰かに魅力を感じても、その憧れの気持ちを外に表すことは下品だ」
また、自分の気持ちを言葉や態度で伝えようとする際に神経質になってオドオドする
のも格好悪いと言われたかもしれません。
子ども時代や若い頃に身につけた考え方を変えるのは難しいことです。
私たちの多くが素直に感情を出せない理由はそこにあります。
誰かれかまわず気持ちを打ち明ける必要はありませんが、できるだけ感情を表に
出す手段や機会をつくってください。
怒っていることや不安に思うことを友人に話したり、恐れていることや嫉妬している
ことを日記に書いたりするのもいいでしょう。
同じような問題で悩んでいる人々の支援グループに入ったりすることもできます。
そしてときにはひとりで、またはあなたのことを大切に思って入れている誰かの
前で、涙を流しましょう。
それが悲しみの涙であろうとも、喜びの涙であろうとも。
ここで考えてみてください。
幼いころ、感情を表現するように、または抑えるように言われた経験はありますか?
うれしい気持ちであれ、つらい気持ちであれ、感情を表現するにはどんな方法が
ありますか?
自分の感じていることにしっかりと向き合うことによって、つらい感情を開放する
ことができます。
西洋と東洋の心理学の両方を取り入れているセラペストのタラ・ベネット=ゴールマン
は次のおうに書いています。
「しっかり向き合うということは、物事を何も変えようとせず、あるがままに見ること
です。
そのときに感じていることを否定したり、感情を遮断したりしないでください。
つらい感情に焦点をおき、開かれた心で受け入れ、しっかり味わうことで、その
つらさを解消することができるのです」
たとえば、観衆のまえでものすごくあがってしまうのであれば、目を閉じて舞台
の上の自分を想像してください。
誰かを亡くし、時がたっても癒されないのなら、亡くなった人の隣に座っているか、
別れを告げている自分を想像してみてください。
不安感や悲しみといった感情を、特別の状況を想像することなく味わってもいいです。
感情が湧いてきたら、変えようとすることなく数分間その気持ちに浸ってみましょう。
このワークの間、できるだけ深く静かな呼吸を続けてください。
他のことを考えてしまったときは、想像したり感じたりしていることに静かに
もどって、呼吸を続けましょう。
涙が出てきたら泣きましょう。
怒りや失望や喜びといったいろんな感情が出てきてもそのままにしてください。
のどが詰まったり、心臓の鼓動が速くなったりといった体の特定の部位に何か
の反応が出てきた場合は、その場所に注意を向け、反応を変えようとはせずに、
そこに息を吹き込むようにイメージしてください。
このワークは、感情をもつことを許すためのワークです。
ある出来事についていろいろと思いをめぐらすというよりは、ただ味わうようにします。
感情を理解したり、変えようとしたりするのではなく、あるがままに受け入れ、
その感情に寄り添うようにしてください。